湘南地域の桜も満開になり、春本番といった陽気ですが、4月1日から新年度が始まります。経営者の皆さまはご自分の会社の期首にあたる方もいらっしゃるでしょうし、新しく社員を迎える方もいらっしゃるでしょう。また、新年度ということで様々な制度の変更や導入があり、その対応に追われているかもしれません。
その中で、以外に悩ましいのは4月1日からの消費税総額表示の義務化です。価格(Price)はマーケティングの観点でも4Pを構成する重要な要素のひとつなので、単に「総額で表示すればいいんでしょ」という話には収まらない悩ましい問題です。

総額表示とは?

国税庁のホームページによれば、「「総額表示」とは、消費者に商品の販売やサービスの提供を行う課税事業者が、値札やチラシなどにおいて、あらかじめその取引価格を表示する際に、消費税額(地方消費税額を含みます。)を含めた価格を表示することをいいます。」となっています。

具体的な表示例

同じく国税庁のホームページでは、「例えば、次に掲げるような表示が「総額表示」に該当します(例示の取引は標準税率10%が適用されるものとして記載しています。)」とされています。
11,000円
11,000円(税込)
11,000円(税抜価格10,000円)
11,000円(うち消費税額等1,000円)
11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)

[ポイント]
支払総額である「11,000円」さえ表示されていればよく、「消費税額等」や「税抜価格」が表示されていても構いません。
例えば、「10,000円(税込11,000円)」とされた表示も、消費税額を含んだ価格が明瞭に表示されていれば、「総額表示」に該当します。

各社の対応は?

ユニクロやGUを展開するファーストリテイリングは、価格据え置きで税込み価格とすることを発表し、3月12日から実施しています。実質約9%の値下げです。さすがファーストリテイリングといった感じですが、中小事業者にとっては9%の値下げは死活問題となる可能性もあり、怖くてできないといった事業者も多いのではないでしょうか。ではなぜファーストリテイリングは値下げに踏み切ったのでしょうか。単に儲かっているからでしょうか。

ユニクロ価格

端数価格が購買者心理に与える影響

ユニクロの商品の価格を見てみると「1,990円」や「3,990円」とか端数価格を多く使っているのがわかります。スーパーなどでもよく目にする手法ですが、一番先頭の桁が繰り上がる手前ぎりぎりの価格にすることで顧客にお得感を与える手法です。このような価格設定手法を端数価格または大台割れの価格とも言います。

ファーストリテイリングはこの端数価格が税込み価格にすることで「2,000円」や「4,000円」の大台以上の価格になってしまうことを嫌がったのだと思います。
ユニクロ=低価格のイメージが崩れてしまい顧客離れにつながるリスクの方が高いと判断したのでしょう。

フランスの心理学者ニコラス・ゲガンが行った実験の結果では、わずか0.01フラン(約1円)の差でも売り上げに差が出ました。
実験では学生を2つのグループに分け、近所の家庭にパンケーキを売りに行かせました。
1つのグループは2フラン(約200円)、もう1つのグループは1.99フラン(約199円)で売るように指示を出しました。結果は、、、

価格実験結果

ということで、たったの0.01フラン(約1円)の差なのに24.6%も売上げに差が出てしまったのです。

ファーストリテイリングとしては9%の値下げより24.6%の売上減を嫌ったのかもしれません。

追随するのかそれとも

価格が売上に及ぼす影響はとても大きいものがあります。しかし、全てでもありません。4月1日以降どのような価格表示が主流になっていくのか多いに注目していたいですね。いずれにしろ経営者としては対応をしていくしかありません。

経営者の悩みは尽きません。

アイキャッチ画像素材:写真AC