あなたは、「小規模事業者持続化補助金」をご存知でしょうか。小規模事業者にとって最も身近な補助金と言ってもよいものですが、通算で第8回目となる公募要領が公開されましたので、変更点を3つにまとめて解説します。

ポイント1:特別枠の新設

通常枠は従来と変わっていないのですが、5つの特別枠が新設され、補助率、補助上限ともに優遇されることになりました。しかしこれらの特別枠が一般的な小規模事業者にとって使いやすいかというとそうでもないように感じます。ひとつ言えることは今までのように「誰にでも補助金出すよ」という姿勢から、「政府の方針に沿った取組みを実施する事業者を支援するよ」という姿勢に変化しているのかなということが言えると思います。

類型 通常枠(現行) 特別枠(新設)
賃金引上げ枠 卒業枠 後継者支援枠 創業枠 インボイス枠
補助率 2/3 2/3(赤字事業者については3/4) 2/3
補助上限 50万円 200万円 100万円
類型概要
賃金引上げ枠販路開拓の取り組みに加え、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+ 30 円以上である小規模事業者
※赤字事業者は、補助率 3/4 に引上げる とともに加点を実施。
卒業枠販路開拓の取り組みに加え、雇用を増やし小規模事業者の従業員数を超えて事業規模を拡大する小規模事業者
後継者支援枠販路開拓の取り組みに加え、アトツギ甲子園においてファイナリストに選ばれた小規模事業者
創業枠産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業の支援」を受け、販路開拓に取り組む創業した小規模事業者
インボイス枠免税事業者であった事業者が、新たにインボイス発行事業者として登録し、販路開拓に取り組む小規模事業者

ポイント2:補助対象経費の分類再編

まず、「専門家謝金」、「専門家旅費」という分類がありましたがそれが無くなりました。また、今までは「広報費」に含めていたウェブ広告や、ホームページ作成費用などのインターネット関連の費用が「ウェブサイト関連費」に外だしされました。そして、ここが一番大きなポイントなのですが、「ウェブサイト関連費」は補助金交付申請額の1/4が上限となり「ウェブサイト関連費」のみによる申請もできないことになりました。
これは非常に大きな変更だと感じています。今までは販路開拓の一環として認められていたホームページの作成自体だけでは申請できないということですので。もうホームページは有って当たり前、それをどう活用するのかということが求められているのでしょう。

補助対象経費科目活用事例
①機械装置費製造装置の購入等
②広報費新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置等
③ウェブサイト関連費ウェブサイトやEC サイト等を構築、更新、改修するために要する経費
④展示会等出展費展示会・商談会の出展料等
⑤旅費販路開拓(展示会等の会場との往復を含む)等を行うための旅費
⑥開発費新商品・システムの試作開発費等(販売商品の原材料費は対象外)
⑦資料購入費補助事業に関連する資料・図書等
⑧雑務役費補助事業のために雇用したアルバイト・派遣社員費用
⑨借料機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの)
⑩設備処分費新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分等
⑪委託・外注費店舗改装など自社では実施困難な業務を第3者に依頼(契約必須)

ポイント3:政策加点要素の追加

加点要素にも追加がされています。「パワーアップ型加点」なんていう面白いネーミングの加点要素が追加されています。
なかなか狙ってこの要素を取り入れた事業計画書にするというのは難しいと思いますので、合致したらラッキーぐらいに思っていた方がよいでしょう。
「電子申請加点」というのもありますのでデジタル化の流れにしたがって電子申請(Jグランツ)は必ず活用しましょう。

加点項目概要
パワーアップ型加点●地域資源型
地域資源等を活用し、良いモノ・サービスを高く提供し、付加価値向上を図るため、地域外への販売や新規事業のたち上げを行う計画に加点
●地域コミュニティ型
地域の課題解決や暮らしの実需に応えるサービスを提供する小規模事業者による、地域内の需要喚起を目的とした取組等を行う計画に加点
赤字賃上げ加点賃金引上げ枠に申請する事業者のうち、赤字である事業者に対して加点
東日本大震災加点福島第一原子力発電所による被害を受けた水産加工業者等に対して加点
経営力向上計画加点中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている事業者に対して加点
電子申請加点補助金申請システム(名称:J グランツ)を用いて電子申請を行った事業者に対して加点
事業承継加点代表者の年齢が満60歳以上の事業者で、かつ、後継者候補が補助事業を中心になって行う場合に加点
過疎地域加点過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法に定める過疎地域に所在し、地域経済の持続的発展につながる取り組みを行う事業者に対して加点

まとめ

いかがでしたか。変更点を俯瞰して見ると先にも述べたとおり「政府の方針に沿った取組みを実施する事業者を支援するよ」という意思を感じます。
活用する側としては活用できる補助金は積極的に活用したいものですが、現状維持の消極的な取組みではなくより成長を実現する取組みが求められているのではないでしょうか。