「ジャンボおしどり寿司」という回転寿司チェーンをご存知でしょうか。
神奈川県内を中心に展開する回転寿司店で、私も家族も大好きなお店ですが、
経営再建中です。
帝国データバンクによると、エコー商事株式会社
(本社:横浜市港南区、代表:柏木克彦)が、2018年4月2日に東京地裁へ
民事再生法の適用を申請し、同日保全命令、監督命令を受けた。
負債は債権者約70名に対し約15億円。なお、全12店舗は通常通り営業中。
2017年12月期は、売上高約17億円、営業利益864万円、に対して支払利息
(営業外費用)が2,659万円。
そして、昨年11月には再建計画が東京地裁に認可を受けたとの事ですので、
再建に向けまさにスタートラインに立ったというところでしょうか。
大手チェーンにはない良さも沢山あると思うのですが、ここでは私なりの分析
と改善策を考えてみたいと思います。
ジャンボおしどり寿司の特徴
まず、名前のとおりネタもシャリもジャンボなんです。そして良い素材を使っている。
カウンター内にいる板前さんに注文すれば目の前で握ってくれるというエンタメ性もある。
反面、いちいち呼びかけて注文するのが煩わしいと思ってしまったりもする。
(店舗によっては、画面で注文してレールに乗った新幹線が運んでくれるところもありますが。)
メール会員になるとクーポンが送られてくる(以前は1,000円OFFクーポンでしたが、、、
現在は若干控え目)などなど
損益分岐点分析をしてみる
前述の数字を元に損益分岐点分析をしてみたいと思います。
損益分岐点を計る前提として、変動費率が必要になりますが、単純化のため変動費=売上原価
とします。また、売上原価が確認できる資料として、同じ関東が基盤(東京、千葉、埼玉、神奈川)
の回転寿司チェーン「銚子丸」のIR情報から売上原価率42%(2018年5月期)を用いてみたいと
思います。(ちなみに、銚子丸の方が売上規模は10倍ほど大きい)
回転寿司の売上原価はほぼ食材費と考える事ができるので、規模の大小に関わらず変動比率は
それほど変わらないと思われます。
■ジャンボおしどり寿司
売上:170,000万円
変動費:71,400万円
限界利益:98,600万円
固定費:97,736万円
営業利益:864万円
売上高営業利益率:0.51%
損益分岐点売上高:168,510万円
安全余裕率:0.876%
営業レバレッジ:114倍
■銚子丸
売上:1,878,900万円
変動費:789,138万円
限界利益:1,089,762万円
固定費:1,031,762万円
営業利益:58,000万円
売上高営業利益率:3.09%
損益分岐点売上:1,778,900万円
安全余裕率:5.322%
営業レバレッジ:18.8倍
比較してみると、売上自体が過少なのですが、固定費の割合が相当に高く、本業の儲けを表す
営業利益率が6分の1程度です。営業レバレッジが異常に高く、典型的というよりかなり
固定費型に偏っているので、売上を少しでもアップする事ができれば、営業利益に跳ね返る分
も大きくなるのですが。
ただ、経営の教科書的には、とにかく固定費を下げるのが第一となるのでしょう。
しかしながら、この固定費の大部分は人件費なのでしょうから、簡単に削れるハズもなく、、、
ここに至るまでには相当の事は行った上でこの数字なのでしょうから、今さらそんな事を
言われてもと言った状況ではないかと思います。
ここはやはり前向きに「売上をいかに伸ばすか」、という視点で考えてみたいと思います。
売上を伸ばす方法とは
マーケティングの4Pというのをご存知でしょうか。経営の教科書には絶対出てきます。
Product:製品、Price:価格、Place:場所(販売チャネル)、Promotion:宣伝、の頭文字を
とったものでマーケティングの基本的な考え方になります。では、この観点から考えてみたいと思います。
Product:製品
回転寿司店の製品は言わずもがな「寿司」ですが、先に書いたとおりネタもシャリも
ジャンボなんですね。マジメか!!(笑)。
糖質制限盛りのご時世ですから、まず、シャリを小さくする。ネタがジャンボであれば
面目は立ちます。女性も子供も数が食べられます。数が多く出る=売上UP!!
と考えていた矢先、先日なんと、新聞の折り込みチラシでこんなものが。
なんと、私の考えていた事が現実に!!素直にうれしいです。
ですが、後出し感は否めませんので先に進めます。(笑)
「寿司」以外のいわるゆサイドメニューはどうでしょうか。
回転寿司界の3大チェーン(スシロー、くら寿司、かっぱ寿司)に比べサイドメニューの
バリエーションは少ないので、良くも悪くも「お寿司」、「魚」にこだわっていることが
伺えます。
たとえば、煎れ立てコーヒーとか、ダシにこだわったうどんやそばなどを検討してもいい
かもしれません。
Price:価格
値下げはしません。大手チェーンと比べると安くはないですが、出来るだけ価格は据置き
したいです。低価格帯には大手チェーンがしのぎを削っていますので、そこと同じ土俵で
は勝負になりません。
値下げは客数が上がるキャンペーンとセットで期間限定でやるならアリだとは思います。
特定のネタのみ「大量仕入に成功したので、今だけ○○円!!」とかですね。
(ロスリーダー戦略=目玉商品を安くし、それ以外の購買点数が多くなることをねらう。
スーパーがよくやるやつですね。)
とにかく、無意味な値下げは大手チェーンと同じと見なされるだけで逆効果です。
値下げにも正当な理由が必要なのです。
Place:プレイス(販売チャネル)
ジャンボおしどり寿司のお寿司を食べるには店舗に行くかテイクアウトだけですので、
より多くのお客様に届けるためにできることはなんでしょうか。それも今あるリソース
(人材、設備)を活用して。
宅配寿司
ファミリーレストランのガストやファーストフードのマクドナルドでさえやってます。
寿司に限って見ても宅配専門店などライバルはたくさんいますが、店舗から配達できる範囲
を商圏とすれば、一番になれるもしれません。宅配寿司であれば、板前さんでなくても作る
ことが可能ですし、オペレーションもマニュアル化できます。
しかも店舗のある回転寿司チェーンで宅配をやっているところは近隣にはないですし、店舗
との相乗効果が見込めます。もしイケるとなれば、宅配専門の店舗を設けてもいいかもしれ
ませんね。
消費税率が10%になれば、宅配は軽減税率が適用される見込みですのでさらに需要があがる
かもしれません。
近隣のスーパーマーケットと提携
お惣菜コーナーに置かせてもらうのです。ランチ握りとか。しかも買取で。買い取って
もらえばその時点で売上になります。
板前さんの出張サービス
冠婚葬祭や、パーティなど、材料と一緒に板前さんが出向いて寿司を握るのです。よい宣伝
にもなりますし、利用してくれたお客様はその後、機会があれば必ず店舗に来店してくれる
でしょう。
別ブランドの店舗を展開
ジャンボおしどり寿司には板前さんがいますので、たとえば、横浜あたりの繁華街で鮮魚を
活かした創作居酒屋のような大人のお店にします。
単価は高めだけど大人の社会人に好まれるような。回転寿司だけに拘わる必要はありません。
やっぱり魚はお酒との相性がいいのです。
Promotion:プロモーション
メール会員をもっと増やす
登録してくれたら特典をあげる。とにかくコンタクトできる顧客を増やすのです。
今は週一程度の定期メールだけですが(私もメール会員です。)、よりパーソナルなタイミング、
誕生日や、記念日などにメールを送ります。
ダイレクトメールも使いましょう。来店してくれたお客様にアンケートを実施し、ついでに住所
ももらうのです。(もちろん、了解を得た上で。特典はケチらずに提供します。)
2人以上で来店してくれたら、飲み物半額
確実に胃袋は人数分あるので、平均客単価は必ずあがります。
勝手なことを書きましたが、今以上に大手チェーンだけが幅を利かせるようになっては顧客で
ある我々は選択肢が少なくなってつまらないので、ぜひ頑張ってほしいと思っています。
よしっ、週末は家族でジャンボおしどり寿司に行こう。
頑張って下さーい!ジャンボおしどり寿司、応援してます。